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参考文献 – トウシュ: ズを履き始める時期はいつでしょう?

トウシューズの練習を始めるためのガイドライン 

[When Can I Start Pointe Work?  Guidelines for Initiating Pointe Training]

International Association for Dance Medicine & Science

参考文献

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本稿は 2009年発行された Journal of Dance Medicine and Science 14巻 3号の 90~92ページに掲載
された文章を翻訳したものです。 
下記の文章をご参考ください:


要約

 ダンスを習う生徒がトウシューズの練習を始める時期は、多くの要素を注意深く評価した後に、決めなければなりません。これらの要素とは、生徒の身体の成長段階、体幹、腹筋、骨盤のコントロール(いわゆる体の中心部(コア)の安定性)、脚(股関節—膝—足首—足で評価される)の骨格配列(アライメント)、足と足首の筋力と柔軟性、そしてダンスのレッスンの頻度と期間です。これらの要素すべてに関わる必要条件を満たし、8歳かそれ以後にバレエを始め、少なくとも週に2回のレッスンを受けている生徒では、ダンスを始めてから4年目にトウシューズの練習を始めるべきです。体幹の安定性が弱く、足と足首が柔軟すぎる生徒は、安全にトウシューズの練習を始めるために更なる筋力トレーニングが必要でしょう。バレエのレッスンを週に1回だけ受けている、あるいはプロを目指して練習していない生徒には、トウシューズの練習を思いとどまらせるべきです。また足関節底屈動作の可動域が小さく、脚のアライメント問題を抱えている生徒には、トウシューズを履くことを許すべきではありません。


幼いダンサーがこう聞きます、「いつトウシューズを履いていいの。」答えは大抵ほぼ即答で「12歳になったらね。」です。「あなたはどんなダンスを学んでいるの。」と答えてくれれば良いのですが。12歳でトウシューズの練習を始めるということは、プロのバレエダンサーを育てるよう組まれたプログラムを持つバレエ学校で4年目を迎えようとしていることが前提になります。8歳か9歳でプロのバレエダンサーを育てるバレエ学校に入学できたということは、その子供はバレエに適した体を持っているということです。このようなバレエ学校では、最初の3年間、技術的な難度と練習の頻度を徐々に増やしていくレッスンカリキュラムが組まれています。12歳になるまでに、生徒は週に4クラスを受講するようになります。カリキュラムが進むにつれて足と足首は強くなり、また体幹と骨盤を上手くコントロールできるようになると共に、自己受容性感覚も発達します。トウシューズの練習は各クラスの最後15分間から始まります(参照1-6)

バレエ学校に入学を許可された生徒は、5歳で地元のダンス学校でレッスンを始め、10歳になった今、週に1度バレエとタップのクラスを受講しているような子供とは、別に考えられなければなりません。この子は年の割に体も小さく、足も足首もあまり強くありません。背骨、膝、足、足首の関節もとてもゆるく、いわゆる柔らかすぎるタイプなのです。その子の先生は2年前にトウシューズの練習を彼女に始めさせようとしましたが、母親は子供がそれほどバレエを本気でやっていないと感じていました。従姉妹は10歳でトウシューズの練習を始めているのに、なんで自分は10歳になったのにトウシューズが履けないんだろう、と彼女は思っています。でも、こういう子供とバレエ学校の生徒と別に考えなければなりません。

成長と発達

トウシューズを履き始める時期を考えるうえで、ある年齢がすべての生徒への答えとなるでしょうか。すべての女の子は12歳で同じ発育段階にあるのでしょうか。これら2つの質問に対する答えは、どちらも「いいえ」です。女の子の生理学的発育には、思春期の始まりとその速度によって明らかな違いがあります。5歳を過ぎてから、身長は毎年およそ5.5cmずつ伸びていきます。成長速度は10歳ごろから急激に増し、12歳で1年におよそ10.5cm伸びるピークを迎えます。体重の成長速度は、12.5歳で1年に8.5kgのピークを迎え15歳で1年に1kg以下に急激に減速します(参照7)。この急成長時期においても、当然それぞれの子供によって成長段階に著しい違いがあります。ロイヤルバレエ学校とロイヤルアカデミーオブダンスの元顧問整形外科医である、ジャスティン・ハウスは、「最も重要な要素はその子の発達過程であり、子供の成熟度に年齢は何の参照にもなりません。」と言いきっています(参照8)

管状骨(長骨)の成長が完了するのは、骨端(成長プレート)の融合あるいは閉鎖によってわかります。それは脚よりも少し先に足で起こります。足の骨化現象は、胎内で妊娠2ヶ月の時に始まります。最後に足の骨端の閉鎖が起こるのは、男の子で平均16歳、女の子で平均14歳です。平均的な女の子の足は5歳から12歳まで毎年0.9cmづつ成長し、12歳で平均23.2cmに達し、その後2年間平均成長は1年に0.8cmと遅くなります(参照9、10)。足の骨の成熟過程が、トウシューズの練習を12歳で始める理由としてよく挙げられます。しかしながら、平均的な女の子の足の成長は12歳では完成しないので、この概念は基本的に間違っています。

12歳の女の子がいた時、その子の足の骨はどのぐらい成長しているといえるでしょう。暦の上での年齢が骨の年齢と同じように変化しているとは限らないので、統計上の平均値の知識だけでは,骨の成長を正しく予測することはできません。レントゲンは足の成長の完成を表すことはできますが、骨端(成長プレート)の閉鎖以前の骨の成熟過程を決定することは難しいのです(参照7)

もし足の骨の成長が12歳で完成せず、もし女の子がトウシューズの練習を始める一般的な年齢が12歳であるのなら、トウシューズの練習が成長過程の足の骨を痛めるという医学的な証拠はあるのでしょうか。私たちの知っている限りでは、研究文献にも逸話にも、筆者の個人的な経験にも証拠はありません。しかしこのことは、12歳以前にトウシューズの練習を始めることが全く安全であると提案するものではありません。実際に体操選手に関する研究文献においては、反復的な微細な外傷が成長過程の骨に害を与えうる、ということが立証されています(参照11)

もし暦の上での年齢でも骨の成熟過程のみの観点からでも、いつトウシューズの練習を始めるべきかを決めることができないのなら、他にどのような要素を考慮すればよいのでしょうか。

セリア・スパージャーは、「解剖学とバレエ:バレエの先生のためのハンドブック」という本の第5版(最終版)でこう書いています。「トウシューズを履いて踊ることは、全身、背中、腰、太もも、脚、足、動きの調整、そして体の動かし方を、ゆっくりと徐々に鍛えるトレーニングの結果なのだと強調せずにはいられません。トレーニングによって、子どもたちは、重心が高い位置に保たれ、膝が伸びて足部に体重がかかりすぎず、完璧なデミポアントを行い、かま足の傾向もなく、つま先が内にも外にも入らず、足指が曲がっても掴んでもいない状態で、完璧なバランスで踊れるようになります。その時期は、子どもによって全く違うタイミングで現れます。そして、そのタイミングは、これまでの訓練だけでなく、骨の成長をも含んだその子の体格や体質によって決まるのです(参照12)。」

トウシューズの練習を早く始めすぎることがもたらす危険

スパージャー氏が提案しているように、子供たちの身体が準備段階に至る前にトウシューズを履くことの潜在的な危険性は、骨や関節の損傷と関わっていることは実際には少なく(もちろん関わっていることは事実なのですが)、不十分な関節可動域、筋力、そして安定性といった身体の機能と、より関わっています。これらの要素は、脚、骨盤、そして胴体への過度のストレスをもたらすかもしれません。   

関節弛緩性が高く、柔らかすぎる足と足首を持った子供にとって、早くトウシューズを履くことは特に危険です。一般的に「甲の高すぎる」もしくは「つま先を伸ばしすぎる(ポワンとしすぎる)」と思われる足も当てにはなりません。このような生徒は、必要な、あるいは必要すぎるほどのポアントの形と柔軟性を持つがために、一般的には、バレリーナ、特にトウシューズを履いてのダンスに選ばれがちです。しかしながら、このような生徒は往々にして、トウシューズを履いて安全に踊るための筋力と姿勢を調整する能力に欠けています。トウシューズの練習を始める前に、脚のすべての筋肉を鍛え、自己受容性感覚を発達させ、正しい身体のポジション(アライメント)を身につけさせなければなりません。

逆に、硬い足と足首をしている子供には、ポアントをする時の足関節底屈(つま先を伸ばすほうへの)可動域が不十分であることによる危険があります。正しいポアントのポジションを確実にするためには、ポアント(足首とつま先の底屈)で立った時に、中足骨(足の甲)が脛骨(すね)と平行でなければなりません。このような正しいポアントを行うことに適した身体の条件を整えず、トウシューズを履いて踊ろうとすることは、足と足首にだけでなく、脚、骨盤、そして胴体にも過度なストレスをかけます。もし膝が過伸展し、反張膝であったら、ポアントでたった時の正しい身体のポジションのために、通常以上の足と足首の関節可動域(底屈)が必要です。残念な事に、時間をかけても足と足首の関節可動域が十分なレベルに達しない場合があり、このような制限をもった子供たちは、トウシューズの練習にとって十分な可動域を得ることができないかもしれません。

トウシューズを履く前の生徒の評価

筋力と自己受容性感覚の成長に関係している要素の1つは、バレエのレッスンを始める年齢です。4歳から始まるエクササイズクラスは、他の目的には有効かもしれませんが、バレエのための適切なトレーニングは8歳以前には熟達しません(チェケッティもバランシンもこれには賛成しています)。もう1つの要素は、子供が行うバレエレッスンの頻度です。一般的に1週間に2回レッスンを受けている子供は、1週間に1回レッスンを受けている子供よりも早く上達します。1週間に4回レッスンを受けている子供は最も早く上達しますが、これだけのレッスン頻度は、通常プロを養成するバレエ学校で行われているものです。

どんな13歳のクラスの中にも、それぞれ違った体つきや能力の女の子がいるように、トウシューズで踊ることについても、異なる発達段階にある子どもたちがいます。これは、ダンスの指導者にとって大きな責任です。それぞれの生徒の成長と発達段階は、子供にトウシューズの練習を始めさせる前に十分に考えられなければなりません。指導者は、生徒がトウシューズの練習を始めるかもしくは続けるために、正しい姿勢のコントロール(よい腹筋と胴体の安定性)ができているか、十分な脚の筋力があるか、そして正しい脚(腰、膝、足首、そして足)のアライメント(位置関係)があるか、それぞれ独自の評価を行うべきです。トウシューズで踊る事に関するすべての判断理由を、生徒の両親に説明しコミュニケーションをとることは重要であり、誤解を招くことを防ぐ意味でも欠かせません。

最後に、トウシューズの練習を始める時期を決定する上で、正しく評価をすることの重要さを強調する観点を2つ紹介します。まずひとつめは、トウシューズで踊ることに苦労しているダンサーは、トウシューズで立つこと以外の他のバレエの技術の上達も難しく感じている場合があります。次に、要求された動きを適切にトウシューズを履いて踊れないことによって、こうしたダンサーは、自信と自尊心の損失を含む精神的な問題を抱えがちです。

したがって、私たちはトウシューズの練習を始める時期を決定する時には、用心深い方が賢明であると提案します。ハウス氏が書いています。「有名なダンサーたちの中には、16歳を超えるまで身体がトウシューズを履くのに十分な強さを備えず、トウシューズを履かなかった人もいます。このことは、トウシューズを履き始める年齢が遅いからといって、経歴に不利になることがないということの証明です。」と(参照8)

ガイドライン

上記の観点を考慮して、トウシューズを履き始める時期のガイドラインを以下に記します。

1.決して12歳以下ではないこと。

2.もし解剖学的に適切な水準に達していないのなら(例えば、足首と足関節の底屈可動域が不十分であったり、下半身の骨格配列が悪かったりすること)決してトウシューズを履かせないこと。

3.もし本気でプロを目指しているというわけでないのなら、トウシューズを履くことを思いとどまらせること。

4.もし胴体と骨盤(体幹の筋肉)や脚が弱いなら、トウシューズの練習開始を遅らせること(そして筋力強化プログラムを行うことを考える)。

5.足と足首が過度の関節可動域をもっているなら、トウシューズの練習開始を遅らせること(そして筋力強化プログラムを行うことを考える)。

6.もしバレエのレッスンが週1回なら、トウシューズを履くことを思いとどまらせること。

7.もしバレエのレッスンが週2回で、上記の条件に当てはまらないなら、バレエを始めて4年目にトウシューズの練習を始めること。

トウシューズで立った踊りの振付家として著名なジョージ バランシンは、「ベビーバレリーナ」を創り出した人でした。彼は「もし幼いダンサーがトウシューズで立っても何もできないんだったら、トウシューズで立たせる理由はないよ!」と言ったと伝えられています(参照13)


参照 

  1. Barringer J, Schlesinger S. The Pointe Book, ed. 2. Princeton, NJ: Princeton Book Co., 2004, pp. 136-57.
  2. Grieg V. Inside Ballet Technique. Princeton, NJ: Princeton Book Co., 1994, pp. 104-6.
  3. Guggenheim CL. A survey of elite professional ballet schools regarding the initiation of pointe work in children. Med Probl Perf Artists. 1994;9:15-7.
  4. Huwyler JS. The Dancer's Body: A Medical Perspective on Dance and Dance Training. Germantown, MD; International Medical Publishing, 1999, pp. 115-9.
  5. Solomon R, Micheli LJ, Ireland ML. Physiological assessment to determine readiness for pointe work in ballet students. Impulse. 1993;1(1):21-38.
  6. Watkins A, Clarkson PM. Dancing Longer, Dancing Stronger. Princeton, NJ: Princeton Book Co., 1990, p 69.
  7. Roemmich JN, Rogo, AD. Physiology of growth and development: Its relationship to performance in the young athlete. Clin Sports Med. 1995;14(3):483-502.
  8. Howse J. Dance Technique and Injury Prevention, ed 3. London: A & C Black, New York: Routledge, 2000, pp. 59-60.
  9. Blais MM, Green WT, Anderson M. Lengths of the growing foot. J Bone Joint Surg Am 1956;38(5):998-1000.
  10. Sarrafian SK. Anatomy of the Foot and Ankle: Descriptive, Topographic, Functional, ed 2. Philadelphia: Lippincott, 1993.
  11. Zetaruk MN. The young gymnast. Clin Sports Med. 2000;19(4):757-80.
  12. Sparger C. Anatomy and Ballet: A Handbook for Teachers of Ballet, ed 5. London: Adam & Charles Black, 1970, pp. 74-8.
  13. Hamilton WG. Ballet. In: Reider B (ed): Sports Medicine, The School-Age Athlete, ed 2. Philadelphia: W.B. Saunders, 1996, pp. 543-81.

国際ダンス医科学学会 • International Association for Dance Medicine and Science 

デイビッド ワイス, M.D., レイチェル アン リスト, M.A., ゲイアン グロスマン, P.T., Ed.M. 
(David S. Weiss, M.D., Rachel Anne Rist, M.A., and Gayanne Grossman, P.T., Ed.M.) 
 
David S. Weiss, M.D.(デイビッド ワイス、医学博士) アメリカ ニューヨーク州 ニュ
ーヨーク市 ニューヨーク大学関節疾患専門病院 ハークネスダンス医療センター、ニュ
ーヨーク大学ランゴン医療センター、ニューヨーク大学医学部整形外科在任。 
 
Rachel Anne Rist, M.A. (レイチェル アン リスト、文学修士) イギリス ハートフォー
ドシャー州 トライングパーク 芸術教育学校取締役。 
 
Gayanne Grossman, P.T., Ed.M. (ゲイアン グロスマン、理学療法士・教育修士) アメリ
カ ペンシルベニア州 フィラデルフィア テンプル大学ダンス学科、ペンシルベニア州 
アレンタウン ミューレーンバーグ大学 シアターダンス学科在任。 
 
この参考文献は、国際ダンス医科学学会教育委員会とメディア委員会賛助のもと作成され
ました。 
  
Copyright © 2009 国際ダンス医科学学会 
国際ダンス医科学学会の承認のもと、この論文の教育目的のための複写を許可します。 
  
代表著者: David S. Weiss, M.D., NYU Langone Medical Center, 317 East 34th Street, 8th Floor, 
New York, NY 10016; david.weiss@nyumc.org 
  
Akiko Sakamoto (坂本明子) and Mayumi Kuno-Mizumura (水村(久埜)真由美) 訳 要約 
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